日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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トマトモザイクウイルス抵抗性遺伝子Tm-1とトバモウイルスの宿主域
*石橋 和大石川 雅之
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p. S0035

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抄録
ウイルスはそれぞれ決まった範囲の宿主にのみ感染する.ウイルスがある生物種のどの個体にも感染できないとき,この生物種を非宿主とよぶ.ウイルスの宿主域がどのようにして決まっているのか,言い換えれば,非宿主植物になぜウイルスが感染できないかは,交配可能なウイルス感受性個体が存在しないために遺伝学的な解析を行うことができず,これまで不明であった.トマトモザイクウイルス(ToMV)抵抗性遺伝子Tm-1の産物は,ToMVの複製タンパク質に結合してその機能を阻害するユニークな働きをもつ.ToMV感受性トマトには対立遺伝子tm-1が存在するが,tm-1タンパク質はToMVの複製タンパク質と結合しないため,ToMVはtm-1をもつトマトに感染できる.ToMVと近縁のトバモウイルスであるタバコマイルドグリーンモザイクウイルス(TMGMV)は知られる限りどのトマト品種にも感染することができない.すなわちトマトはTMGMVの非宿主である.我々は,tm-1がTMGMVの複製を阻害し,これがTMGMVがトマトに感染できない一因となっていることを明らかにした.このことは,ウイルスが適応していない宿主生物にはウイルス因子と阻害的に相互作用する因子が存在し,ウイルスの宿主域を制限し得ること,逆に宿主に適応したウイルスはこのような阻害機構から逃れるように進化してきたことを示唆する.
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© 2010 日本植物生理学会
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