日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

ミヤコグサのABA低感受性変異体enf1の共生窒素固定能と応用の可能性
富永 晃好永田 真紀夫津木 耕一阿部 秀俊内海 俊樹阿部 美紀子九町 健一橋口 正嗣明石 良Hirsch Ann有馬 進*鈴木 章弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. S0067

詳細
抄録
マメ科植物の内生ABA濃度は根粒形成に影響を及ぼす.そこで根粒形成が促進されたミヤコグサ変異体を得るため,ABAを含んだ培地を用いた選抜を行った.得られた候補系統のうち,No12は野生型に比べ根粒数が多く窒素固定活性も上昇していた.そこで戻し交配をおこないF2世代153個体中で最も根粒数及び窒素固定活性の高かった系統をenf1(enhanced nitrogen fixation 1)と命名した.enf1は根粒数及び植物あたりの窒素固定活性が約2倍に増加しており,内生ABA濃度は野生型よりも減少していた.ABA合成阻害剤アバミンを野性型に与え,内生ABA濃度を低下させたところ,アバミンを与えた植物の根粒重あたりの窒素固定活性は無処理区に比べ上昇した.これはABAが根粒数だけでなく窒素固定活性にも影響することを示している.また窒素固定を阻害することが知られている一酸化窒素(NO)のレベルを測定したところ, enf1では野生型に比べ根粒内のNOレベルが低かった.つまりenf1の窒素固定活性上昇の原因は,内生ABA濃度の低下に伴う根粒内NOレベルの低下であると考えられる.enf1の長期栽培では根粒数,種子重,植物のバイオマス,窒素含量等が野性型ミヤコグサよりも高かった.そこで同様の方法でダイズ変異体の単離をおこなった.それらを用いた根粒着生試験や圃場試験の結果についても議論する.
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事
feedback
Top