日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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イネ無胚乳変異原因遺伝子ENL1はSNF2ヘリカーゼ様タンパク質をコードする
*加藤 大和原 睦美佐藤 豊北野 英己長戸 康郎石川 亮木下 哲武田 真服部 束穂
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p. 0060

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抄録
イネ無胚乳変異体enl1は劣性一遺伝子座の変異で、その種子は胚乳を形成できない。一方、その胚は肥大化し休眠性を喪失しているが発芽能をもつ。我々はenl1のマッピングを行い、第4染色体長腕上テロメア近くに存在する推定遺伝子領域のエキソン内に欠失変異を見つけた。さらにこの遺伝子領域を含む野生型ゲノム断片を用いた形質転換によりenl1変異の表現型が完全に相補されたことから、本遺伝子がenl1変異の原因遺伝子であると結論した。ENL1遺伝子はSNF2ファミリーATPaseドメインとHELICcドメインを持つSNF2様ヘリカーゼをコードし、植物のみならず広く真核生物にそのオルソログが存在する。ヒトのENL1オルソログであるPICHタンパク質は細胞分裂時の染色体凝集や染色体腕部のアーキテクチャー維持、あるいは姉妹染色分体の解離に必要であることが報告されている。PI染色法を用いて初期胚乳形成過程の核・染色体の様子を共焦点レーザー顕微鏡観察したところ、野生型では細胞化に先立つ遊離核の一様な分布が見られたのに対し、enl1変異体では染色体の分離異常の結果と考えられる巨大化した核が観察された。これらの結果は、多核期胚乳における染色体サイクルの異常が、enl1変異体における無胚乳表現型の原因であることを示している。
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© 2011 日本植物生理学会
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