抄録
ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の原糸体は、主に先端の細胞が成長、分裂することで伸長する。また、細胞が生きたままでも核や葉緑体を観察しやすい。そこで、ヒメツリガネゴケ原糸体の先端細胞を、細胞周期を通して継時的に観察し、核や葉緑体の挙動を解析した。
先端細胞の核は、M期の後期から終期にかけて存在した所から少し先端方向へ移動した後、一時的に停滞することが分かった。その後、先端細胞成長速度の増加に合わせて先端方向への移動を再開した。葉緑体は細胞周期を通して互いの相対的位置関係を保ちつつ、細胞の先端成長や核の先端方向への移動に伴った動きをした。また、核の停滞が始まる前に、次の細胞分裂でどちらの娘細胞に分配されるかがほぼ決定していた。葉緑体数は細胞周期を通じて1.5~2倍に増えたが、葉緑体によって細胞周期中に全く分裂しないものから2度も分裂するものまでさまざまだった。また、細胞分裂1時間前から分裂までの細胞に対してより詳細な解析を行うと、M期に入る直前に核付近の葉緑体が核に引き寄せられることが明らかになった。