抄録
PEPCはホスホエノールピルビン酸(PEP)と炭酸水素イオンからオキサロ酢酸と無機リン酸の生成を触媒する酵素で、TCAサイクルへ基質を補充する役割を果たす。イネは5種類の植物型PEPCを持ち、Osppc1、2a、2bおよび3が細胞質に局在するのに対し、Osppc4はプラスチドにターゲットされる。本研究では、これらの植物型PEPCが機能する生理条件下を明らかにすべく、リコンビナントタンパク質を用いて酵素特性を調べた。根の主要PEPCであるOsppc1は、グルタミン酸やリンゴ酸で強い活性阻害を受けるものの、既知の植物型PEPCに比べ最大活性が非常に高く、PEPに対するKm値も低かった。イネでは根が主要なアンモニア同化器官であるため、アンモニア同化の炭素骨格として多量の有機酸の供給を必要とする。Osppc1の高い最大活性は、根の主要な有機酸供給系への関与を示唆すると考えられる。一方、緑葉の主要PEPCのひとつであるOsppc4は、Osppc1とは異なり、阻害剤であるグルタミン酸とアスパラギン酸に対する感受性が低いことがわかった。またグルコース6-リン酸で最大活性はそれほど影響を受けなかったが、PEPに対する親和性が増加することがわかった。現在、Osppc4活性に対する様々な光合成産物の影響も調べており、その他のPEPC特性の解析結果も合わせて報告する予定である。