抄録
我々はこれまでに、グルタチオン結合性葉緑体型アルドラーゼの同定や内生グルタチオン量が低下したシロイヌナズナ変異体の解析から、グルタチオンが光合成の制御に関わることを明らかにしてきた。本研究では、グルタチオンを投与したシロイヌナズナを用いて、グルタチオン施用による個葉光合成への影響について解析した。シロイヌナズナ野生型植物(Columbia)に、酸化型(GSSG)または還元型(GSH)グルタチオンを底面灌水により施用した場合、種子収量が増加し、地上部バイオマス量が増加した。播種後5週目の植物のCO2固定速度は、GSSGおよびGSH施用で、無施用区と比較して高かった。GSSGとGSHのどちらを処理した植物でも、葉面積あたりの窒素およびクロロフィル含量の増加が認められ、Rubisco量の増加も認められた。Rubisco量は、GSSG施用区で無施用区の約1.3倍であったのに対し、GSH施用区では約2倍に増加していた。また、無施用区と比較して、GSSG施用区のChl a/b比は同程度なのに対し、GSH施用区では高かった。これらの結果から、GSSGとGSHは、CO2固定能力を高めることができるが、そのメカニズムは異なることが示唆される。