抄録
マメ科植物は、根粒菌との相互作用により根に根粒を形成する。根粒では、植物細胞内へと感染した根粒菌が、バクテロイドへと分化し窒素固定能を発揮する。バクテロイドは、窒素固定を行う上で必要な炭素源や無機養分を宿主植物からの供給に依存している。
バクテロイドのニトロゲナーゼは窒素分子をアンモニアへと還元する酵素であり、その酵素活性にはモリブデンが必要である。宿主植物は、バクテロイドにモリブデンを供給していると推測されるが、その輸送機構は明らかではない。近年、シロイヌナズナにおいてモリブデン輸送体(AtMOT1)が同定された。そこで、我々はマメ科モデル植物であるミヤコグサのAtMOT1相同遺伝子が、バクテロイドへのモリブデン輸送に関与するかどうかについて検討した。
ミヤコグサゲノムには4つのAtMOT1相同遺伝子(ST51-54)が見出された。リアルタイムPCRを用いた発現解析により、ST54は根粒でのみ発現し、その発現量は根粒の発達とともに増加することが明らかとなった。一方、残り3つの相同遺伝子は、すべて植物体全体で発現していた。これらの結果から、ST54遺伝子がバクテロイドへのモリブデン供給に関与すると期待された。現在、酵母を用いたST54のモリブデン輸送活性の解析や、RNAiによる発現抑制を行っており、本発表ではこれらの結果について報告する。