抄録
マメ科植物は根粒菌と共生して生物的窒素固定を行う。ミヤコグサ等のマメ科モデル植物において、共生初期の分子機構は明らかになりつつあるが、根粒感染細胞での共生成立の機構や窒素固定能の発現・維持機構については未だ知見が限られている。そこで我々は、窒素固定系成立、維持に関与する植物側の因子を明らかにする目的で、新規のミヤコグサ有効根粒形成不全変異体(Fix-変異体)Ljsym104に着目し、その解析を行った。
Ljsym104は、根粒菌との共生条件下の生育が野生型に比べ著しく劣り、窒素欠乏症状を示す。着生した根粒は白色で肥大せず、表面に黒い着色がみられる根粒も観察された。根粒組織は分化し、感染細胞中のバクテロイドは野生型とほぼ同様の形状を示したが、感染細胞の早期老化の徴候が観察され、根粒の窒素固定活性(アセチレン還元活性)はきわめて低かった。これらの結果と、KNO3存在下の栽培試験で生育が回復した結果から、Ljsym104では、根粒菌との共生に異常が生じたため、窒素欠乏症状が引き起こされたと考えられた。その分子機構を明らかにするため、Ljsym104の原因遺伝子をマップベースクローニングにより同定し、遺伝子発現解析を行った。本発表では、これらの結果について報告する。