日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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マツノザイセンチュウ感染に伴う抵抗性および感受性クロマツのトランスクリプトーム解析
*平尾 知士渡辺 敦史
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p. 0147

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抄録
マツノザイセンチュウによる「マツ材線虫病(マツ枯れ)」は日本の森林被害を代表する慢性的問題であり、1971年から現在までにマツノザイセンチュウの感染によって約4,000,000 m3のマツ林が失われている。このマツ枯れ対策の一つとして、林木育種の分野では抵抗性マツの選抜を進めているが、日本で植栽されているクロマツとアカマツのうち、クロマツはマツノザイセンチュウと極めて親和性が高く、抵抗性個体の選抜に多大な労力と時間を費やしている。
我々は、抵抗性関連遺伝子をマーカーとした分子育種を目指し、マツノザイセンチュウに対する抵抗性クロマツの防御メカニズムおよび抵抗性遺伝子の単離に向けて研究を進めている。これまでに組織・細胞や代謝産物からのアプローチなど現象面での研究が進められ、抵抗性個体ではマツノザイセンチュウによる形成層や木部樹脂道、木部放射柔組織の破壊が少なく、細胞の周辺にフェノール物質が沈着することが確認されている(楠本ら, 2010)。一方で、遺伝子情報を含む遺伝子発現からの基礎的情報は極めて少ない。今回、我々はマツノザイセンチュウを接種した抵抗性および感受性個体から接種後1、3、7、14日の時系列を設定し、サブトラクション法から抵抗性と感受性で発現量の異なる遺伝子を単離した。本発表では、単離した遺伝子の発現挙動を中心に抵抗性および感受性個体の防御応答の違いについて報告する。
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© 2011 日本植物生理学会
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