抄録
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、フィコビリン生合成系において、ヘムを酸化的に開裂しビリベルジンIXαに変換する酵素である。ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803には、ho1 (sll1184) 、ho2 (sll1875) という2つのHOアイソフォームをコードする遺伝子が存在している。ho1欠損変異株Δho1は、好気条件下では生育できず、嫌気条件で生育させたΔho1を好気条件に移すと、1)フィコシアニン(PC)含量の低下、2)プロトポルフィリンIX(PPN)の蓄積という特徴的な形質を示す。これらの結果から、HO1は好気条件での生育に必須であることが示唆された。今回、私たちは、好気条件下でも生育可能なΔho1の偽復帰変異株R1を単離し、その形質の解析を行った。R1の好気条件下での生育は野生株より少し遅いが、PC含量は野生株と同等まで回復し、PPN蓄積もΔho1の半分程度まで緩和されていた。RT-PCRにより、本来低酸素条件でのみ発現し、好気条件下でほとんど発現しないho2が、R1では発現していることがわかった。好気条件下でのho2の発現によりho1の機能が相補されR1が生育可能となったと推察される。このような変化を引き起こした変異部位を特定するため、現在、次世代シーケンサーを用いたゲノム解析を行っている。