日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

植物の化学防御に関わる複数の二次代謝経路を制御する新規転写調節因子の同定と機能解析
*嵯峨 寛久小川 拓水鈴木 秀幸柴田 大輔太田 大策
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0244

詳細
抄録
陸上植物は化学的な生体防御手段として様々な二次代謝産物を生合成し蓄積する.カマレキシンとグルコシノレートは,モデル植物であるシロイヌナズナの主要な二次代謝産物であり,病原体感染や昆虫食害に対する化学防御手段としてのグルコシノレート生合成制御に関しては多くの知見が報告されている.一方,多様な環境変化に応答して,これら複数の二次代謝経路が包括的に制御される分子機構は明らかではない.我々は,シロイヌナズナ根においてカマレキシンとグルコシノレートの生合成を制御する転写調節因子CMD (camalexin deficient)を新規に同定し,その機能解析を行った.CMD遺伝子のT-DNA挿入変異系統(cmd)はカマレキシン蓄積に欠損を示す変異体として単離した.CMDは既知の転写因子と高い相同性を示し,CMD:GFP融合タンパク質の核局在性から転写調節因子であることが示唆された.cmd変異体ではカマレキシン生合成遺伝子CYP71A12の発現量が低下し,CMD過剰発現系統ではCYP71A12転写産物が恒常的に蓄積していた.さらにcmd変異体では,グルコシノレート生合成を制御するMYB転写調節因子の発現量低下とともに,グルコシノレートプロファイルが変化していた.以上の結果より,CMDはシロイヌナズナの化学防御に関わる複数の二次代謝経路を制御する新規の転写調節因子であると推察された.
著者関連情報
© 2011 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top