日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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Alストレスにおけるメリケンカルカヤ(Andropogon virginicus L.)の4つの耐性機構とNO生成について
*江崎 文一Kottapalli Jayaram高橋 憲公東 藍子
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p. 0279

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抄録
イネ科の野生植物メリケンカルカヤは高いAl耐性を示す。その耐性機構を解析した結果、1)根でのAl吸収を極力抑え、根に集積しない。2) Alを根から地上部へ移動させて根中での毒性濃度を下げる。3) 地上部へ移行したAlを葉の棘状組織に集積させ、毒性効果の広がりを抑える。4)抗酸化酵素(SODとcatalaseなど)を高く誘導させることで、体内中のAl毒性で生じる酸化ストレスの発生を軽減させるなど、4つのAl耐性機構が存在していた。特に2)と3)はこの植物に特異的な機構であった。
一酸化窒素(以下、NO)は一般に環境ストレス下での応答機構で、シグナル伝達物質として機能する場合がある。そこでメリケンカルカヤではNOが同様の役割を持つのか、金属ストレス条件下で検討した。その結果、Al処理でNOは顕著に発生したが、Cd、Cr、Cu、Zn処理では生成されなかった。また今回検討した他のイネ科植物では、どの金属処理でも生成されなかった。ところでAl処理では根の伸長阻害だけでなく、酸化ストレスや核DNAの切断化なども起こる。そこで根でNOの生成を誘導させた後にAl処理したところ、脂質過酸化の発生は抑制できたが、核DNAの断片化は抑制されなかった。また根の伸長阻害にも変化がなかった。メリケンカルカヤでのNO生成は、Alストレス特異的な応答だが、そのAl耐性への関与は限定的であると思われた。
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© 2011 日本植物生理学会
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