日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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リノレン酸過酸化物由来ケトアルデヒド4-oxo-(E)-2-hexenalによる潜在的な光合成阻害とその消去
*真野 純一弘田 智永田 光曜松井 健二
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p. 0301

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抄録
葉緑体では活性酸素種はチラコイド膜の表面または疎水領域で生成するため,膜脂質の不飽和脂肪酸は容易に酸化され,さらに分解されて毒性の高いα,β-不飽和アルデヒド(活性アルデヒド;RAL)を生じる。例えばタバコ葉では強光照射によりアクロレイン,(E)-2-ペンテナールなどのRALが増大するがRAL消去能を高めた組換えタバコは強光耐性,パラコート耐性を示す。またRALは葉緑体カルビン回路のチオール酵素を強く阻害する。すなわち,RALは細胞の酸化的損傷の一因である。本研究では,不飽和脂肪酸に由来する多様なRALのうちどれがもっとも強く光合成を阻害するか評価した。葉緑体ストロマ画分に様々なアルデヒドを加え,一定時間後にカルビン回路酵素および活性酸素消去系酵素の活性を測定した。PRK,GAPDH,DHAレダクターゼはRALにより敏感に失活した。リノレン酸の13位過酸化物から生じる4-oxo-(E)-2-hexenal(OHE)はこれらの標的酵素を阻害し,その半阻害濃度は,既知RALのうち最も強毒性のアクロレインと同程度だった。OHEは,傷害応答アルデヒド (Z)-3-hexenalをチラコイド膜に与えることで生じるが,グルタチオンにより効率よく消去される。すなわち,傷害部位で生じた(Z)-3-hexenalは健全部位の光合成を潜在的に阻害しうるが,その効果はグルタチオンにより抑制されている。
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© 2011 日本植物生理学会
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