抄録
短日植物であるキクは花芽分化および花器官の発達に限界日長より短い日長が必要である。最近、FT/Hd3aタンパク質は花成ホルモン(フロリジェン)であることが提唱されている。我々はこれまでに二倍体野生ギク、キクタニギク(Chrysanthemum seticuspe f. boreale)よりFT/Hd3aと相同性を示すCsFTL1、 CsFTL2およびCsFTL3を同定した。花成が促進される短日条件の葉においてCsFTL1と CsFTL2の発現は低下する一方、CsFTL3の発現は上昇した。さらに、葉におけるCsFTL3の発現は光刺激と概日リズムによって制御されることが示唆された。CsFTL3を過剰発現するキク‘神馬’は野生型の花成が抑制される長日条件において花芽分化および花器官の発達がみられ、開花に至った。キクタニギクの中で約12時間の限界日長を持つNIFS-3系統と、約13時間の限界日長を持つMatsukawa系統におけるCsFTL3の葉での発現は、それぞれの限界日長以下の短日条件で有為に高かった。以上の結果からCsFTL3はキクにおいてフロリジェン様の機能を持ち、花成誘導日長条件において花芽分化および花器官の発達に重要な役割を果たしていることが示された。