日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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DNA損傷応答がfugu2の補償作用に果たす役割
*久永 哲也Ferjani Ali堀口 吾朗石田 喬志杉本 慶子塚谷 裕一
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p. 0332

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抄録
補償作用とは、植物の葉において何らかの要因によって細胞増殖能が低下すると、細胞数の減少を補うかのように細胞伸長が昂進し、葉に含まれる細胞が大型化する現象である。この現象を解明することによって、植物の器官サイズ制御機構について新たな知見が得られると期待される。我々はこれまでに、補償作用を示すシロイヌナズナ変異体を5系統単離し、解析してきた。今回はfugu2について報告する。マップベースクローニングの結果、FUGU2はクロマチンアセンブリファクター1の大サブユニットをコードするFASCIATA1 (FAS1)であることが明らかとなった。また、マイクロアレイ解析の結果、fas1変異体の葉原基では46遺伝子の発現が上昇していることが示された。さらに、これらのうち多くの遺伝子の発現が、DNA損傷応答時にも誘導されることが示唆されている。これらの結果から、fas1ではDNA損傷応答の結果として、細胞周期の停止およびエンドサイクルの昂進が起こり、異常な細胞肥大に至ると推測された。そこでDNA損傷応答の役割を遺伝学的に検証するために、fas1とDNA損傷応答に欠損のある変異体との二重変異体を作成した。その結果、atr変異によってfas1の細胞伸長が抑圧されることを見出した。現在さらなる解析を進行中であり、本発表ではそれらの結果をもとにDNA損傷応答の器官サイズ制御における役割について議論したい。
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© 2011 日本植物生理学会
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