抄録
近年、複葉の形態形成に関して分子発生学的な知見が急速に蓄積し、複雑さの制御機構や、複葉形成に必須な因子の同定などが進んでいる。一方で、小葉がいつ・どこに形成されるのかといったパターニングに関しては、ほとんど理解が進んでいない。特に、小葉が形成される方向性には種によって多様性があり、トマトやミチタネツケバナなどの求基的なタイプと、エンドウやハナビシソウなどの求頂的なタイプが見られる。方向性決定機構については、葉の先端基部軸方向の成長勾配が決定要因ではないかという仮説が提唱されていたものの、十分に検討されていなかった。そこで我々は、まず葉原基の成長を経時的に観察して定量データを取得する実験系を確立し、この仮説を検討した。その結果、求頂的なタイプのハナビシソウが成長勾配仮説と矛盾しない成長パターンを示す一方で、求基的なタイプのジャガイモはこの仮説では説明できない成長パターンを示した。これを受けて我々は、成長勾配に加えて組織の未分化状態や組織分化のタイミングなど、複合的な要因によって小葉形成パターンが決まっている可能性を考え、詳細な組織学的解析や遺伝子発現解析などを進めている。さらに、レーザーアブレーション法を用いて発生を物理的に攪乱する実験を行い、小葉間の位置決定機構についても解析を進めており、これらを統合的に議論したい。