抄録
植物の形態形成には、細胞間の情報伝達が必須である。近年の解析から、12ないし13アミノ酸からなるCLE(CLV3/ESR-related)ペプチド類が、この情報伝達の主要因子としてクローズアップされてきた。CLEペプチドは、タンパク質のN端とC端でプロセスされ、さらに特定のプロリンが水酸化された後、その一部は糖鎖修飾を受ける。これらプロセシングと糖鎖修飾過程は、活性をもつCLEペプチド生産に必須であるが、その分子機構は不明のままである。そこで、我々はCLEペプチドのプロセシング機構を明らかにするために、SOL1に着目し研究を行った。sol1はCLE19過剰発現体の表現型を抑圧する変異体として単離されている。この表現型がCLE19特異的に表れるかどうかを調べるために、エストロゲン誘導系を用いた全長のCLE19、CLV3の過剰発現系を作成した。その結果、sol1突然変異はCLE19の過剰発現による表現型を抑制するもののCLV3の過剰発現の効果は抑制しなかった。一方で、化学合成したCLE19およびCLV3ペプチドを投与したときには、その効果をsol1は抑圧しなかった。これらの結果は、SOL1がCLE19のプロセシングに特異的に関与していることを示唆している。現在、SOL1のin vitro活性検出、細胞内局在について解析を進めており、これらを合わせて、SOL1の機能を考察する。