抄録
植物脂質は生体膜成分だけでなく,貯蔵物質,シグナル分子,防御物質として重要な生理機能を担っている.植物脂質はオイルボディというオルガネラに貯蔵される.種子は多数のオイルボディに大量の貯蔵脂質を蓄積し,オイルボディの膜タンパク質オレオシンはオイルボディのサイズや種子の耐凍性を担っている (1).一方,葉の細胞のオイルボディに関する生理学的知見は乏しい.カレオシン3 (CLO3)は,種子に局在するオイルボディ膜タンパク質のホモログで,ストレスに応答する.CLO3とGFPの融合タンパク質をCLO3プロモーターにより誘導する形質転換シロイヌナズナ(pCLO3::CLO3-GFP)の観察を行った所,CLO3-GFP蛍光は若い植物体では見られなかったが,ストレスにより誘導され葉のオイルボディ膜上に局在した.pCLO3::CLO3-GFPをEMSにより変異原処理し,若い時期でもCLO3-GFP蛍光を発する変異体を選抜した.現在までに3系統の変異体の単離に成功している.そのうちの一つの系統(#025-681)では,発芽後10日目の本葉でCLO3-GFP蛍光が見られた.野生型では発芽後10日目の本葉にオイルボディが見られないが,#025-681ではオイルボディが認められた.栄養器官におけるオイルボディ形成について考察する.
(1) Shimada et al. (2008) Plant J.