抄録
黄色キンギョソウの花弁には、オーレウシジン6-グルコシドとブラクテアチン6-グルコシドが蓄積し、黄色花色の原因となっている。同花弁にはカルコンの4'位配糖体(テトラヒドロキシカルコン4'-グルコシドおよびペンタヒドロキシカルコン4'-グルコシド(PHC4'G))も蓄積し、黄色の一部を構成する。カルコン配糖体は、オーレウシジン合成酵素(AmAS1)の作用により上述のオーロン配糖体に変換される。AmAS1の基質特異性および生成物特異性解析から、同花弁の主たるオーロン前駆体はPHC4'Gである可能性が示唆された。しかし、PHC4'Gの前駆体であるPHCの生合成の詳細な知見は得られていない。最近、キンギョソウのカルコン合成酵素(AmCHS1)がマロニル-CoAとカフェオイル-CoAから、PHCをde novoに合成しうることが示された。リグニンの生合成において、カフェオイル-CoAはp-クマル酸3位水酸化酵素(C3H)/ヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼの共役酵素系によって生合成されることが明らかにされており、キンギョソウ花弁においてもカフェオイル-CoAの生合成が同酵素系により達成され、PHCの合成に提供されると考えた。そこで本研究では、黄色キンギョソウ花弁に発現するC3H遺伝子の単離、異種発現および活性評価を行なった結果を報告する。