抄録
ABI1に代表される2C型脱リン酸化酵素(グループA PP2C)はABAシグナル伝達の負の制御因子である。我々は、グループA PP2CによるABAシグナル伝達制御機構がヒメツリガネゴケやゼニゴケにも存在することを明らかにし、陸上植物の進化の過程で保存されてきた機構であることを報告した。我々はグループA PP2C(PpABI1A,PpABI1B)を完全に欠損したヒメツリガネゴケを作出した。この二重破壊株は通常条件下において、生育抑制、ABA応答性遺伝子の恒常的発現、乾燥や凍結といった水分ストレスに耐性を示すといった表現型を示し、ABAシグナル系が恒常的に活性化されていることが明らかとなった。この二重破壊株のABA応答を糖、熱可溶性タンパク質、およびデハイドリンの蓄積を指標に解析したところ、その蓄積レベルは外的ABAの濃度によらず一定であり、明確なABA応答は観察されなかった。さらに、それらの蓄積レベルは10μM ABAを与えた野生型や一重破壊株よりも低いことが明らかとなった。以上の結果は、ヒメツリガネゴケグループA PP2Cは通常状態においても活性化状態となり得るABAシグナル系を抑制している主要要因であり、さらに、高濃度ABA存在下ではABA応答を正に制御する機能ももつことが示唆している。