抄録
植物ホルモンABAの情報は、PYR型受容体-PP2C-SnRK2の経路をへて様々な因子に伝えられることが明らかとなった。シロイヌナズナでは、少なくとも6つのPP2Cがこの情報伝達に関わっていると考えられている。そのうちAHG1とAHG3は、他の4つのPP2Cと一次配列が若干異なるのみでなく核のみに局在し種子で強く発現するといった点でも一線を画しており、この2つのPP2Cは特有の機能を持つと予想される。それを検証する一つのアプローチとして、本研究ではAHG1, AHG3と特異的に相互作用する因子の探索を試みた。TAP法を用いて植物抽出液からAHG1と相互作用する因子を探索したところ、転写抑制複合体の構成因子と考えられる蛋白質の一つが得られた。酵母を用いた相互作用実験により、その蛋白質は6つのABA関連PP2Cの中でAHG1とAHG3のみと相互作用することが示された。また、AHG1とAHG3は転写抑制複合体の他の構成因子とも相互作用することが示された。最近、ジャスモン酸応答で転写抑制複合体が重要な役割を果たしていることが明らかにされ、同様の複合体がABA応答でも機能していることが示唆されている。本研究で得られた結果から、ABA応答における転写抑制複合体の機能を、AHG1およびAHG3が特異的に制御している可能性が示された。