日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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光損傷を受けた光化学系IIの修復コストと光馴化の関係
*宮田 一範野口 航寺島 一郎
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p. 0452

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抄録
葉への入射光が強い時、葉は光阻害を受ける。光化学系II(PSII)の正味の光阻害の程度は、PSIIのD1タンパク質の光損傷と、D1タンパク質ターンオーバーによる修復とのバランスによって決まる。タンパク質のターンオーバーには、大きなエネルギーコストがかかるので、それを定量することは葉のエネルギー収支を知る上で重要である。また、葉の光合成系は、光環境に馴化するので、それに伴い修復活性も変化する可能性が高い。本研究では、まず、強光(HL)と弱光(LL)下で栽培したホウレンソウの葉に、損傷速度と修復速度に差異があるかを調べた。Katoら(2002)に基づき、損傷速度定数(kpi)と修復速度定数(krec)を算出した。kpiはLL葉で大きく、krecはHL葉で大きかった。Kato & Sakamoto(2009)に基づいて計算した光損傷後のD1タンパク質を修復するためのエネルギーコストは、1,600 μmol m-2 s-1の光を120分間照射時には、15,000~20,000 μmol ATP m-2に達した。これは、同時間に暗呼吸で生産されるATPの10%以上にあたる。また、修復コストはHL葉の方が大きかった。kpiとkrecの結果と併せて考えると、 HL葉の方が面積あたりのPSIIの量が多いことが、その原因であろう。
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© 2011 日本植物生理学会
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