抄録
葉の細胞間隙から葉緑体へのCO2拡散は、光合成の重要な律速要因である。この拡散のしやすさをあらわす葉肉コンダクタンス(gm)は、乾燥ストレス時に低下するという報告も多い。gmの測定には、ガス交換測定による細胞間隙CO2濃度(Ci)の精確な測定が前提となる。しかし、植物は、乾燥条件下で気孔を閉じるので、気孔コンダクタンス(gs)が低下し、さらには気孔開度の葉面における不均一性(パッチネス)も引き起こしてしまう。過去に行われた研究は、この点を考慮したものは少なく、Ciの測定値は精確性に欠ける。
われわれは、気孔開閉によるgsの低下や、パッチネスの問題を回避するためにABA合成経路変異体Nicotiana plumbaginifolia (aba1)を用いた実験系の確立を試みた。乾燥ストレスの指標として、水を十分量与えた時の土壌含水量を100%とし、含水量を20%程度まで低下させた。このときWTにおいてgsが大きく減少するのに対し、aba1では顕著な減少がみられなかった。本研究では、この系を用いて、乾燥時、乾燥からの回復時におけるgmの経時変化を測定している。同時に、gmの変化の原因と考えられる、細胞膜タンパク質アクアポリン量、細胞間隙に面している葉緑体の面積(Sc)、カルボニックアンヒドラーゼ活性についても測定している。これらを合わせて報告する予定である。