抄録
環境ストレスに応答して様々な遺伝子やタンパク質の発現の変化が引き起こされる。遺伝子やタンパク質の発現変化は、新たなmRNAの転写・翻訳によるものだけでなく、既存のmRNAの分解や保存などのRNA制御によっても調節されている。近年、このRNA制御を介した遺伝子・タンパク質発現の調節の場として、Stress granule(SG)を始めとした細胞内顆粒の存在が動物や酵母を用いた研究で明らかになってきた。SGは翻訳されていないmRNAを一時的に保持することで翻訳を抑制し、環境ストレス応答にも密接に関わっていると考えられている。植物においては熱ストレス条件下でのSG様細胞内顆粒の存在が報告されているが、SGの機能や標的となるmRNAについては不明なままである。本研究では、植物におけるSGの機能を解明することを目指し、まずSGの指標となるRNA結合タンパク質、UBP1とVenus(改変GFP)の融合タンパク質を発現する形質転換シロイヌナズナを作製した。形質転換植物にストレス処理を施し、UBP1の細胞内局在の変化を観察したところ、熱ストレスだけでなく塩ストレスによってもSGが細胞質に誘導されることが示された。この結果から、SGが植物の環境ストレス応答において重要な役割を果たしていることが示唆された。