抄録
乾燥及び低温環境下では、様々なシグナル因子が多くの遺伝子発現調節に関与していると考えられている。現在、数多くの植物ゲノム解析が進みさらにマイクロアレイ技術が進歩したため、全遺伝子を網羅した遺伝子発現解析を行うことができるようになった。また、ゲノム解析、マイクロアレイ解析、植物ホルモン解析を組み合わせることによって、遺伝子発現様式が類似する遺伝子群のプロモーター領域に保存されるシス因子を選抜することや、シグナルネットワークを解析することも可能になった。本研究では、1. シロイヌナズナ、イネ、ダイズにおける乾燥及び低温誘導性遺伝子の選抜、2. それぞれの植物の乾燥及び低温誘導性プロモーターの保存領域の選抜、3. それぞれの植物の乾燥及び低温環境下におけるアブシシン酸の蓄積量の分析、4. 1-3の統合解析によって、乾燥及び低温環境下における主要転写経路に関与するシス因子を推定した。これらの解析からシロイヌナズナ、イネ、ダイズの乾燥環境下における主要転写経路には、シス因子であるABA responsive element(ABRE)が関与していることが推定された。また、低温環境下における主要転写経路は、シロイヌナズナはDehydration responsive element (DRE)、イネはEvening element(EE)、ダイズはABREが関与していることが推定された。