日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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黒米化の決定要因に関する分子遺伝学的解析
*小口 太一前田 寛明山口 琢也江花 薫子矢野 昌裕蛯谷 武志井澤 毅
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p. 0550

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抄録
黒米は果皮/種皮にアントシアニン系色素が蓄積した形質であるが、その遺伝学的背景は十分明らかでない。そこで我々は、黒米の分子遺伝学的背景の解明を目的とし、コシヒカリを背景とする黒米品種、富山黒75号を用いて解析を行った。富山黒75号は、黒米品種、紅血糯とコシヒカリの交配により育種した品種で、紅血糯由来の3領域がインテグレートされている。登熟中の種皮/果皮のトランスクリプトーム解析の結果、富山黒75号では、フェニルプロパノイド化合物の初期過程に関する酵素群に加えてLDOX遺伝子およびの第4染色体紅血糯由来領域中のbHLH型転写因子遺伝子の発現が黒米で特異的に高発現することが明らかとなった。一方、RcRd領域をインテグレートした系統では、初期酵素群に加えて、LARが活性化を受けていた。次に、富山黒75号およびジーンバンクから得た23の黒米品種について日本晴/Kasalath間および日本晴/KhauMacKho間のSNPマーカーセットを用いた遺伝型解析を行ったところ、アウスを除く、インディカ、熱帯ジャポニカ、温帯ジャポニカの遺伝背景をもつ黒米品種が存在し、かつ、黒米品種の第4染色体bHLH遺伝子周辺は熱帯ジャポニカに由来することが明らかになった。この結果は、熱帯ジャポニカ祖先種に起こった黒米化変異が自然交配を人為選抜されたことで強いイントログレッションが起こったことを示唆する結果である。
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© 2011 日本植物生理学会
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