抄録
乾燥や塩害などの水ストレスによって細胞内のアブシシン酸(ABA)濃度が上昇し、これが引き金になって多数のABA誘導性遺伝子の発現が活性化される。このABAによる遺伝子発現には、シス因子としてABA応答(ABRE)配列が必要である。我々のグループでは、このABRE配列に結合して転写を活性化するシロイヌナズナのbZIP型転写因子としてAREB遺伝子群を単離した。また、ABAを介した水ストレス応答においてAREB1、AREB2およびABF3が正の制御因子として中心的な役割を果たしていることを示した。本研究では、世界のダイズ生産をになうブラジルにおける深刻な干ばつ問題の克服を目指して、ダイズのAREB相同性遺伝子(GmAREB)クローニングして機能解析を行なった。クローニングしたダイズの4種類のAREB相同性遺伝子GmAREB1、GmAREB2、GmAREB3およびGmAREB4について、さまざまなストレス処理における遺伝子発現応答解析を行った。また、プロトプラストの一過的発現系を用いて転写活性化能の解析を行い、これら4種類のGmAREB遺伝子が植物細胞中で転写因子として機能していることを示した。本発表では、さらにGmAREB過剰発現シロイヌナズナを用いた表現型解析の結果を報告し、ABAを介した水ストレス応答におけるGmAREB遺伝子の機能と役割について考察する。