抄録
エンドリデュプリケーションとは、M期の細胞分裂が起こらずに連続的にDNA複製が起こる特殊な細胞周期である。植物ではDNA含量の増大により細胞の体積も大きくなるため、植物の器官サイズの決定に関与していると推測される。この現象を明らかにするため、トランスポゾン挿入変異系統から、暗所で胚軸の核相が減少して胚軸伸長が抑制される変異株sd3を単離した。この変異の原因遺伝子は、ミトコンドリア内膜に局在するトランスロケーターであるTIM21と高い相同性を示した。GFPとの融合タンパク質を用いて細胞内局在を調べたところ、ミトコンドリアでの局在が観察された。これらの結果からsd3変異体では、ミトコンドリアの活性低下によるATP量の減少がエンドサイクルを介した細胞成長の抑制につながると推測された。そこで、sd3変異体のATP蓄積量を測定したところ、ATP量の減少が認められた。ATP合成阻害剤であるantimycin Aの添加実験により、核相の減少および胚軸伸長阻害が認められた。一方、SD3過剰発現体では、核相の増大と器官の大型化・ATP量の増大が観察された。また、SD3過剰発現体において、複数の呼吸鎖・ATP合成酵素の発現量が上昇していたことからATP量が核相増大に関与することが示唆された。本発表では、ミトコンドリアによるATPを介したエンドリデュプリケーション制御機構の存在を議論したい。