日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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アブシジン酸により誘導される細胞分裂と細胞分化に関わる新奇因子の同定と解析
*土屋 祐弥中村 康平坂田 洋一Quatrano Ralph長谷部 光泰藤田 知道
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p. 0642

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抄録
多細胞生物は不等分裂と等分裂とを使い分け、細胞の種類や数を制御している。ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の原糸体は、通常頂端幹細胞が不等分裂し、分裂能を維持した頂端幹細胞と低下した次頂端細胞を生じる。一方でアブシジン酸(ABA)処理すると、原糸体細胞がほぼ等分裂し、球状の細胞(brood cell)が多数生じる。このような分裂様式の切り替えと細胞運命の変更がABAによりどのように制御されているのかはまだほとんどわかっていない。
我々は約3000種類の完全長cDNAをプロトプラストへ一過的に過剰発現させることにより、brood cell様の細胞を誘導する3つの因子を同定した。この内の1つはABAシグナル伝達系の正の制御因子であるABI3/VP1のオロソログであり、残りの2つはそれぞれプロリン残基に富んだ細胞壁タンパク質と、グリコシルトランスフェラーゼをコードしていると考えられた。後者の2因子をそれぞれ条件的に過剰発現したところbrood cell様の細胞が誘導でき、また細胞の分裂面の向きが乱れ、細胞極性が崩壊していることが示唆された。このような反応はABA添加時にも観察でき、これらの因子がABA応答に関わっていると考えられた。現在機能抑制体の作成や遺伝子産物の局在解析などの機能解析を進めている。
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© 2011 日本植物生理学会
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