抄録
真核生物のmRNAの5'リーダー領域には、上流ORF(uORF)と呼ばれる小さなORFがしばしばみられる。その中でuORFにコードされるペプチドが翻訳制御に関与する例が、これまでに報告されている。それらの制御では、uORFにコードされる新生ペプチドが自身を翻訳したリボソームに作用してuORF内で停滞させることにより、下流の主要なORFからの翻訳が抑制されると考えられる。
我々は、シロイヌナズナにおいてuORFぺプチドにより制御される遺伝子を新たに同定することを目的として、シロイヌナズナの5'非翻訳領域のデータベースからuORFを網羅的に検索し、その中からアミノ酸配列が植物間で広く保存されているuORFを探索した。それらの保存された配列を持つuORFについて、フレームシフト変異やアミノ酸置換によってアミノ酸配列を変化させ、下流のレポーター遺伝子の発現への影響を検討した。その結果、アミノ酸配列依存的に下流ORFの翻訳を制御すると考えられるuORFを、新たに5つ同定した。それらのuORFのアミノ酸配列は、いずれもC末端側の領域が植物間でよく保存されているが、保存領域の長さ、アミノ酸配列、終止コドンの位置には多様性が見られた。実際に、いくつかのuORFについて翻訳制御にuORFの終止コドンが必要であるかを検討したところ、uORFによって終止コドン依存性に違いがあることが明らかになった。