抄録
青色光は、孔辺細胞に発現する青色光受容体フォトトロピンに受容され、細胞膜H+-ATPaseのC末端から2番目のスレオニンのリン酸化を引き起こすことにより活性化し、気孔開口の駆動力を形成する。これまで、青色光に依存したH+-ATPaseのリン酸化は、孔辺細胞プロトプラスト(GCPs)を用いた生化学的解析により行われてきた。しかしながら、生化学実験に用いるGCPsの調整には、大量のロゼット葉(5,000枚以上)と長時間の作業時間(約8時間)を要するという問題点があった。そこで本研究では、一枚のロゼット葉より単離した表皮組織を用い、免疫組織染色による孔辺細胞H+-ATPaseの検出を試みた。まず、H+-ATPaseに対する特異的抗体を用いて免疫組織染色を行った結果、孔辺細胞において強いシグナルが検出された。次に、H+-ATPaseのC末端から2番目のリン酸化スレオニンを特異的に認識する抗体(anti-pThr947)を用いて検出を行った。その結果、野生株では表皮組織に青色光照射することにより、孔辺細胞H+-ATPaseのリン酸化が検出されたが、フォトトロピン二重変異体では全く検出されなかった。以上の結果は、一枚のロゼット葉由来の表皮組織を用いた免疫組織染色により、青色光・フォトトロピンに依存した孔辺細胞のH+-ATPaseのリン酸化を検出することが可能であることを示している。