日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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ハプト藻Emiliania huxleyiのピルビン酸カルボキシラーゼの特性解析
*辻 敬典鈴木 石根白岩 善博
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p. 0692

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抄録
Emiliania huxleyiは海洋に広く生息する単細胞藻類であり,紅藻の二次共生により生じたハプト植物門に属する.そのため,葉緑体が4枚の包膜を持つ点や,貯蔵多糖がβ‐グルカンである点など,緑色植物とは異なる特徴を持つ.我々は,先行研究において,E. huxleyiがC3光合成を行うが,同時にβ-carboxylationによりC4化合物を光合成初期産物として生成することを示した.E. huxleyiのESTデータベースからβ-carboxylation酵素を探索したところ,動物などの非光合成生物が持つと考えられているpyruvate carboxylase (EhPYC) の配列が見つかった.本研究では,ウェスタンブロットにより,EhPYCはタンパク質レベルで発現していることを確認し,さらに免疫染色(間接蛍光抗体法)によりEhPYCが葉緑体に局在することを示した.また,His-tagを付加したリコンビナントEhPYCは,PYC活性を示した.以上の結果より,EhPYCは偽遺伝子などではなく,実際にPYCとして葉緑体で機能していると考えられる.PYCによる葉緑体内でのC4化合物生成はこれまでに報告がなく,今後はその生理的役割を明らかにすることが重要である.
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© 2011 日本植物生理学会
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