抄録
AtDUR3は、窒素欠乏状態の根で高く発現し、高親和型尿素輸送の中心的な役割を担うという生理学的な役割があるが、その翻訳後制御機構や相互作用因子による活性調節など、生化学的な性質は不明な点が多い。尿素は、細胞質でウレアーゼによりアンモニウムと二酸化炭素へ速やかに分解されるので、その細胞内への輸送活性は翻訳段階で制御される可能性がある。シロイヌナズナ細胞膜タンパク質のリン酸化プロテオーム解析やリン酸化部位予測プログラムによる解析およびトポロジーの予測から、AtDUR3タンパク質のリン酸化による活性調節部位を11か所予測した。これらのアミノ酸に点変異を導入し、リン酸化と脱リン酸化を模倣した変異AtDUR3を作製した。これらの変異AtDUR3を尿素輸送欠損酵母株に形質転換し、尿素を単一の窒素源とする培地上で生育させたところ、野生型AtDUR3と比較して、変異AtDUR3を導入した酵母の相補能が変化することから、AtDUR3がリン酸化によって制御される可能性が示唆された。また、スプリットユビキチンシステムを用いて、AtDUR3と相互作用するタンパク質をシロイヌナズナcDNAライブラリーからスクリーニングし、相互作用候補として、11遺伝子を選抜した。現在、相互作用因子の共発現や、変異の導入がAtDUR3の尿素輸送能力をどのように変化させるか、安定同位体標識された尿素を用いて解析を進めている。