抄録
イネ葉緑体型PEPC(Osppc4)はイネ属に特異の有機酸合成系に関与しており、炭素骨格を供給することで葉身の窒素同化に重要な役割を担っている。窒素同化におけるOsppc4の作用機作を明らかにするため、水耕液のアンモニア濃度を急激に高めた際、PEPCと窒素同化関連酵素の遺伝子発現が葉身と根でどのように変動するか調べた。
アンモニア濃度を高めると、葉身ではOsppc4とgln2(プラスチド局在性グルタミン合成酵素をコード)の発現が速やかに誘導された。Osppc2aとOsppc2b(細胞質型PEPCをコード)の発現も若干増加したが、他の遺伝子はほとんど発現誘導を受けなかった。一方根では、ほぼすべてのPEPC遺伝子、窒素同化関連遺伝子の発現が誘導されたが、Osppc4とOsppc1(根の主要な細胞質型PEPC)がもっとも速やかな発現誘導を示した。遺伝子発現誘導にともなって、Osppc4タンパク質量も増大した。以上の結果は、Osppc4が土壌中のアンモニア濃度の増加に速やかに応答してイネの窒素同化能を調節する可能性を示している。