抄録
光化学系Iの還元側では電子が複数の経路に分配される。直鎖型と循環型電子伝達系ではそれぞれNADP+とプラストキノンを還元する。その他にアミノ酸代謝系へ還元力を供給し,さらにチオレドキシン系を還元し酵素の活性制御をする。本研究では、光化学系I及びその周辺の電子伝達が影響を受けた変異体の単離と原因遺伝子の同定をシロイヌナズナで試みた。これまでに、EMS処理M2種子から生育した個体の蛍光誘導期現象をPAMによりスクリーニングし,光化学系IIの還元型QAの再酸化が遅延した系統を単離した。この中の2系統である32-33及び7-2-33について、原因遺伝子の同定をマップベースクローニングで行った結果、両系統でフェレドキシン依存性グルタミン酸合成酵素(Fd-GOGAT)をコードするGUL1にアミノ酸置換変異が見つかった。GUL1の過剰発現により32-33の蛍光誘導期現象は正常に戻ることから、原因遺伝子はGULであると結論した。32-33ではFd-GOGATの蓄積量がクロロフィル当たりで25%程度に減少し,泳動度もわずかに小さい。一方、光化学系I、光化学系II、シトクロームb6fの蓄積量は野生型と大きく変わらなかった。現在、変異体の光化学系I還元側の電子伝達活性を詳細に調べるため、P700の酸化還元速度を解析中で、その結果についても報告する予定である。