抄録
植物の草丈はブラシノステロイド(BR)などにより制御されており、そのシステムには未解明な点が多い。我々はシロイヌナズナのキメラリプレッサー発現体の解析から矮性化に関与する転写制御因子としてHR0444を単離した。HR0444のキメラリプレッサー発現体(HR0444SRDX)においては細胞伸長が抑制され、強い矮性化が誘導された。また、HR0444SRDXはBRに対して非感受性であり、エクスパンシンなどを含むBR誘導性遺伝子の発現も低下していた。一方で、HR0444過剰発現体(HR0444ox)がHR0444SRDXと類似の表現型を示したことからHR0444はリプレッサーであると思われたが、HR0444には転写抑制活性がなく、DNAにも結合しない可能性が示された。そこで我々は、HR0444はアクティベーターと相互作用することでその機能を抑制すると仮定し、HR0444の相互作用因子を単離した。HR0444相互作用因子は細胞伸長を促進するアクティベーターであり、HR0444はこれらの転写活性化能を阻害した。このことから、実際に細胞伸長を誘導しているのはHR0444相互作用因子であり、HR0444はその転写活性を阻害していることが解った。また、HR0444の発現はBRのシグナル伝達因子BZR1によって抑制されており、BRはHR0444の発現阻害を介して細胞伸長を促進していることが解った。