抄録
CYP78Aサブファミリーはコケ植物を含む陸上植物に広く保存されており、被子植物では葉間期や器官の大きさを制御していることが報告されている。しかしながら、被子植物以外ではその機能は明らかでない。本研究では、コケ植物である蘚類ヒメツリガネゴケ (Physcomitrella patens)の2つのCYP78A (CYP78A27とCYP78A28)の役割を調べるため、CYP78A破壊株と過剰発現株を作製した。CYP78A27もしくはCYP78A28の片方を破壊した株では、原糸体および茎葉体の形成においては野生型に比べて変化は見られなかった。一方、CYP78A二重破壊株では、原糸体の成長と茎葉体への分化が抑制された。また、CYP78A27およびCYP78A28の過剰発現株では共に、茎葉体への分化が遅れる傾向が見られた。次に、野生型、二重破壊株、過剰発現株において植物ホルモン量を比較したところ、インドール-3-酢酸、イソペンテニルアデニン、トランスゼアチンの内生量が二重破壊株で大きく変化していた。以上の結果から、ヒメツリガネゴケにおいてもCYP78Aが植物の成長制御に関わることが示唆された。