抄録
ジベレリンは(GA)は高等植物の発芽、茎部伸長、花芽形成などを制御する植物ホルモンである。GAシグナル伝達において、DELLAタンパク質は負の制御因子として機能している。GAの添加にともないDELLAタンパク質は速やかに分解され、下流にGAシグナルが伝達される。GAF1はDELLAタンパク質のひとつであるGAIと相互作用する転写因子として単離された。DELLAタンパク質は明確なDNA結合領域をもたないが、酵母や植物において強い転写活性化能を示したことから、GAF1と複合体を形成することで遺伝子の発現制御に関与している可能性が示唆された。DELLAタンパク質はGA内生量が低いときに核内に蓄積するので、GAフィードバック制御を受けるGA生合成酵素遺伝子を標的とすると予測した。トランジェントアッセイによって、GAF1-DELLA複合体はGA 20-酸化酵素遺伝子の転写を活性化することが示された。また、GAF1とDELLAタンパク質の植物細胞内における相互作用はGAの添加によって消失することがBiFC法により明らかとなった。これらの結果から、GAF1は、GA内生量の変化にともない、その転写活性化能を調節する可能性が示唆された。本研究では、GA 20-酸化酵素遺伝子プロモーターのGAF1結合部位の特定とGAF1複合体による転写制御機構の更なる解明を試みた。