日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナのホスファチジン酸ホスファターゼ変異体におけるストレス応答の解析
*沼田 光紗下嶋 美恵都築 朋木下 俊則太田 啓之
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p. 0713

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抄録
Phosphatidate phosphohydrolase 1/2 (PAH1/2)はphosphatidic acid (PA)を脱リン酸化しdiacylglycerolを生成する可溶性型のホスファチジン酸ホスファターゼであり、脂質の代謝において重要な役割を果たしている。pah1pah2二重変異体では、phosphatidylcholine、phosphatidylethanolamine、PAといったリン脂質が増加する (Nakamura et al. 2009 PNAS)。PAは脂質代謝において中心的な役割を果たす代謝中間体であり、高等植物ではストレス応答にかかわるabscisic acid(ABA)のシグナル伝達物質としても重要であることが知られている。
そこで本研究ではPAH欠損変異体を用いて、ABAに関与する様々なストレス応答の解析を行った。その結果、pah1pah2ではABA濃度依存的に、野生株に比べ著しく発芽率が低下し、少なくとも発芽においてpah1pah2はABA高感受性であることが明らかになった。しかしその一方で、ABA感受性について葉の気孔開口阻害についても調べたが、pah1pah2と野生株では差が見られなかった。したがって、ABAシグナル伝達を介したストレス応答におけるPAHの役割は、種子発芽時と葉の気孔閉鎖においては異なることが示唆された。
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© 2011 日本植物生理学会
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