抄録
LONは原核生物と真核生物に広く保存されたAAAプロテアーゼであり,シロイヌナズナには細胞内局在性が異なる4つのLONが存在する。このうちペルオキシソームに局在するAtLon2(At5g47040)は,N末端側にシャペロンドメインを有し,乾燥や塩ストレス,ABAによって発現が上昇するストレス応答タンパク質である。本研究ではシロイヌナズナにおけるLon2の生理的役割を明らかにするために,RNA干渉によって作成した発現抑制株lon2iとT-DNA挿入株lon2-1を用いた機能解析を行った。その結果,lon2iとlon2-1では共にペルオキシソームタンパク質の輸送効率が低下すること,ペルオキシソームタンパク質の発現パターンが変動することが明らかになった。これらの変異体では,ペルオキシソームの主要な機能であるβ酸化活性が低下し,発芽後の生長が抑制された。また強光ストレスの負荷によって光化学反応の最大量子収率(Fv/Fm)の低下が観察された。さらにlon2-1変異体に塩ストレスを負荷すると,弱光下であってもFv/Fmが著しく低下した。ペルオキシソームが担う光呼吸は光阻害の回避機構の一つであることから,lon2iとlon2-1では光呼吸活性が抑制されていると考えられる。本報告では,Lon2変異体に見られるペルオキシソームタンパク質の輸送異常とストレス感受性との関連性について考察する。