抄録
強光や高温ストレス下では、光化学系II(PSII)の反応中心結合タンパク質D1が酸化的損傷を受けて、PSIIの機能が低下する。損傷D1タンパク質の分解には、チラコイド膜に存在する金属プロテアーゼFtsHが関与していることが示唆されている。ホウレンソウチラコイド膜とPSII膜(グラナに相当)についてFtsHプロテアーゼの分布を調べたところ、チラコイド膜では単量体、二量体、および六量体のFtsHが、またPSII膜では六量体のみが存在していることが分かった (Yoshioka et al. J. Biol. Chem. 2010)。FtsHプロテアーゼは、タイプAとタイプBの二種類のサブユニットから形成されている。活性型の六量体FtsHが存在するPSII膜に強光を照射すると、亜鉛イオンで促進されるD1タンパク質の分解が起きた。このことから、チラコイド膜上ではPSIIが多く存在するグラナでFtsHプロテアーゼによる損傷D1タンパク質の分解が行われている可能性がある。現在、強光処理後のチラコイド膜からPSII膜を単離し、FtsHプロテアーゼが損傷D1タンパク質の集中しているグラナへ集合する可能性があるかどうかを調べている。