日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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鉄欠乏条件下のオオムギとイネの下位葉の元素動態の比較
樋口 恭子*月居 佳史大橋 英典三輪 睿太郎
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p. 0850

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抄録
我々は、オオムギがムギネ酸分泌による鉄の獲得以外にも鉄欠乏適応機構を有していることを報告しており、それに関連する可能性のある現象として鉄欠乏のオオムギでは黄化葉の窒素・硫黄同化関連遺伝子の発現が低下すること、下位葉の老化が促進されることを明らかにしている。これらのことから我々は、鉄欠乏のオオムギは下位葉の老化を促進することによって同化産物を転流させ、黄化葉で低下した同化能力を補っているという仮説を立てた。そこでオオムギの下位葉から同化産物が転流している可能性を検証するため、オオムギとイネを鉄欠乏条件下で24日間栽培し、各部位の元素含有率を経日的に調べた。
処理24日目の鉄欠乏のオオムギの1葉では対照区に比べ亜鉛とマンガンの含有率は上昇し、窒素とカリウム、硫黄の含有率は低下していた。またオオムギの葉身の窒素含有率は全体的に低下しており、下位葉ほど早期から、大きく低下する傾向が見られた。一方、処理24日目のイネの2葉でも亜鉛とマンガンの含有率は上昇していたが、窒素とカリウム、硫黄の含有率にあまり大きな変化は見られなかった。これらの結果から、オオムギは下位葉の老化を促進することによって同化窒素を転流させ、鉄欠乏によって低下した窒素同化を補っている可能性が示唆された。
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© 2011 日本植物生理学会
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