抄録
NRT2;3はヒメツリガネゴケがもつ8つの硝酸イオン輸送体の1つである。主要NRT2成分であるNRT2;1~NRT2;4の中では、NRT2;3の硝酸イオンに対する親和性は他に比べて低く、高濃度(10 mM)の硝酸イオン条件で培養した原糸体ではmRNA発現量が全NRT2 mRNA発現量の80%以上を占める主要成分であり、その硝酸イオン吸収活性は翻訳後段階で活性制御される。植物のNRT2の多くに存在している推定リン酸化部位であるセリン残基のひとつをアラニン残基に置換したNRT2;3変異株を作成したところ、S414A株ではNRT2;3 mRNAが正常に発現しているにもかかわらず、NRT2;3タンパク質の存在が確認されなかったことから、S414はNRT2;3タンパク質が安定して存在するために重要な役割を果たす可能性が示唆された。またS507A株ではPpNRT2;3タンパク質が存在するにもかかわらず、NRT2;3欠損株と同様にNRT2;3 mRNA以外のNRT2 mRNAの高発現を示したことから、S507がNRT2;3の機能発現に関与する可能性が示唆された。本研究ではNRT2;3の推定リン酸化部位であるセリン残基をアスパラギン酸に置換した変異株を作成し、それらのNRT2遺伝子発現、NRT2;3タンパク質発現、及びアンモニア添加によるNRT2;3の硝酸イオン吸収の阻害の有無を解析した。