日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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植物根端の液胞形成における新奇構造体の解析
*佐藤 繭子後藤 友美豊岡 公徳松岡 健
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p. 0872

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抄録

液胞は、植物細胞の体積の90%を占め、タンパク質の貯蔵や分解だけでなく、細胞の伸長や形態保持などの形態形成に重要な働きを担っている。液胞は、ゴルジ体や小胞体の一部が分化して形成されると言われているが、その形成の仕組みは未だ明らかになっていない。我々は、高圧(加圧)凍結技法(High-pressure freezing; HPF)により、植物培養細胞および植物組織に適した固定法や包埋法、免疫電顕法の検討を行ってきた。その中で、液胞膜タンパク質のひとつである液胞型プロトンピロフォスファターゼ(V-PPase)を認識する抗体を用いてシロイヌナズナおよびタバコ根端分裂組織の免疫電顕を行った際、液胞膜の他に、V-PPaseが局在するリング状の新奇な構造体を見出した。このリング状構造体は、直径0.3~2 μmで扁平膜構造と二重膜構造が存在し、細胞質を取り囲むように存在していた。このリングが互いに融合して小さい液胞に変化している複雑な構造体もあり、特に中心柱付近の、液胞が未発達な細胞で観察された。またリング状構造体が大きな液胞に融合しつつある様子も見られた。一部の構造体では、内部に分解途中の細胞内物質を含んでいた。このことから新奇構造体は、形成途中の液胞であると推測される。現在、連続切片に対する免疫電顕法により、リング状構造体の立体構築を進めている。

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© 2011 日本植物生理学会
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