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約4億7千万年前に起きた植物の陸上進出は、生物進化の過程において極めて重要なイベントの一つであり、現在の地球環境の形成にも大きな影響を与えたと考えられる。植物の陸上化過程の解析は、古生物学や現生生物の解析のみならず、地質学や気候学など様々な分野からのアプローチが進行している。そのような状況の中、我々は車軸藻綱クレブソルミディウムの解析から植物の陸上進出要因の解明を目指している。
車軸藻綱の細胞分裂過程や分子系統学による解析により、陸上植物は車軸藻綱から派生したことが支持されている。車軸藻綱中でもクレブソルミディウムは単純な体制を持ち、水中および陸上の乾燥、貧栄養環境でも生育が可能であり、陸上植物の起源を明らかにするために重要な生物と考えられる。
我々は、物質生産およびエネルギー生産に中心的な役割を果たす葉緑体およびミトコンドリアの機能は陸上のストレスに適応するために重要であると考え、クレブソルミディウムの葉緑体DNAおよびミトコンドリアDNAの配列解析を行った。本発表では、クレブソルミディウムの葉緑体DNAおよびミトコンドリアDNAの特徴および、さまざまな植物・藻類の葉緑体DNAおよびミトコンドリアDNAと比較した結果を報告する。さらにそれらの結果から車軸藻綱から陸上に適応した植物が誕生した一要因を考察する。