抄録
シロイヌナズナSRタンパク質ファミリーの中で、動物の主要なスプライシング因子ASF/SF2のホモログであるatSR30は強光に対して迅速に発現応答する(Plant Cell Physiol. 48: 1036-49, 2007)。さらに、atSR30はスプライセオソーム基本構成因子や他のSRタンパク質などと相互作用する。これらの結果から、atSR30による強光に応答した選択的スプライシング制御機構の存在が示唆される。そこで本研究では、atSR30遺伝子破壊株(KO-sr30)を用いて、atSR30により選択的スプライシング効率が制御される遺伝子群の同定を試みた。
タイリングアレイ解析の結果、強光ストレス(800 μmol/m2/s, 1 h)下においてKO-sr30株では野生株と比較して230ヶ所のコーディング領域が有意に変化していた(P<0.01)。それらの領域にはタンパク質ターンオーバー(21%)、転写因子(15%)、シグナル伝達(30%)に関連する遺伝子が多数存在した。半定量的RT-PCRによる検証の結果、強光ストレス下における選択的スプライシング効率もしくは転写レベルの変化が22個の遺伝子において認められた。シークエンス解析の結果、atSR30はカセットエキソン型および選択的3’,5’スプライス部位型選択的スプライシングの制御因子として機能していると考えられた。