日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803における光依存型プロトクロロフィリド還元酵素欠損株の光感受性形質の相補
*平出 優人後藤 武知井原 邦夫藤田 祐一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0940

詳細
抄録
ラン藻のクロロフィル生合成系には、進化的起源の異なる2つのプロトクロロフィリド還元酵素、光依存型酵素(LPOR)と暗所作動型酵素(DPOR)が併存する。DPORはニトロゲナーゼと類似した酵素であり、酸素によって速やかに不活性化される。DPORが酸素発生型光合成生物においてどのように機能しているのかを検討するため、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803のLPOR欠損株を単離した。LPOR欠損株は強光下では生育不能だが、一定の光強度以下の弱光下では生育することから、弱光下では酸素に対する何らかの防御系が機能すると推察される。このDPOR防御系同定のため、活性酸素種消去に関わる遺伝子群をLPOR欠損株のゲノム中立部位(slr2030-slr2031)に導入し、光感受性形質の相補を検討した。ところが、何も発現させない対照形質転換体も光感受性を相補した。そこで、LPOR欠損株とその元となった野生株についてゲノム解析を行った結果、全ゲノム配列が決定されたKazusa株では154-bpの欠失が生じたために中立部位と見なされているslr2031が、LPOR欠損株とその野生株ではその欠失のない完全長として保持されていた。このことから、完全長slr2031部位へのベクター導入によって引き起こされるslr2031の欠失がLPOR欠損株の光感受性を緩和する可能性が示唆された。
著者関連情報
© 2011 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top