抄録
ABC輸送体は植物の膜輸送において大きなファミリーを形成している。ラン色細菌において、50以上のABC輸送体が報告されているが、その機能が分かっているものは少ない。酸性ストレスは植物にとって生存に関わる重大なストレスであるが、その応答メカニズムは未知な部分がある。我々はラン色細菌Synechocystis sp.PCC6803において、酸性ストレス応答に関する研究を行ってきたところ、slr1045欠損株が酸性に高い感受性を示した。
slr1045遺伝子はABC輸送体をコードしているとされているが、その機能は分かっていない。そこで、リアルタイムRT-PCRを行ったところ、酸性条件下でslr1045遺伝子の発現量が増加していることが分かった。また、slr1045欠損株に関して、酸性以外のストレスへの応答を検討するために、マグネシウム、銅、コバルトなどの金属イオン、浸透圧/塩といったストレスに対する表現型解析を行った。その結果、slr1045欠損株は野生株と比較して、高浸透圧ストレスで耐性を示した。以上のことから、slr1045は酸性ストレス耐性に関わる遺伝子であり、酸性以外のストレスに関しても応答を示していると考えられる。現在ABC輸送体としての機能を詳細に検討するため、ICP-MSによる分析を行っており、その結果も併せて報告する予定である。