日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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発芽の季節はどう決まる?高温による発芽抑制の分子メカニズム
*川上 直人藤 茂雄重山 拓摩
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p. S0023

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抄録
冬型草本や夏型草本において、温度は種子発芽の季節を決める主要な環境要因である。シロイヌナズナなどの冬型草本種子は春に散布されるが、夏の間は高温により発芽が抑制されるため、生育に適した秋に発芽することが可能となっている。一方、高温や低温は作物種子の発芽を阻害し、その生産効率を大きく低下させる原因となっている。私達はシロイヌナズナを材料とし、恒明条件において、高温はアブシシン酸(ABA)合成酵素をコードするNCED9遺伝子の発現を上昇させ、ABAの作用を介して発芽を抑制することを明らかにした。一方、赤色光パルス照射条件ではABA欠損突然変異種子の発芽も高温で抑制されることから、ABA以外の発芽抑制因子の関与が示唆された。フィトクロムと相互作用する転写制御因子、PIL5は光による発芽制御に働く。PIL5遺伝子の機能喪失突然変異体を用いた解析から、赤色光パルス照射条件では、高温はPIL5タンパク質の作用を介して発芽を抑制すると考えられた。また、最近芽生えの高温応答に関わることが示されたPIF4も、発芽の高温阻害に働くことを示す結果を得ている。では、温度はどのようにしてNCED9遺伝子やPIL5PIF4遺伝子の働きを制御しているのだろうか?ここでは高温による発芽抑制機構について、今後の展望も含めて議論する。
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© 2011 日本植物生理学会
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