抄録
概日リズムは遺伝的に組み込まれた自律的な振動を示す性質をもち、生物に環境中の時間情報を予期させる働きをもつ。この十数年の遺伝学的解析は、シロイヌナズナにおける時計関連遺伝子を見いだしてきた。しかし時計関連遺伝子がコードするタンパク質の多くはその機能が未知であり、従って時計システムを分子レベルで理解することは困難であった。
今回私たちはPSEUDO-RESPONSE REGULATOR 9, 7, 5タンパク質が、概日時計機構で転写抑制因子として機能することを報告する。グルココルチコイドで機能誘導されるPRR5-GRタンパク質は、直接的にCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1 (CCA1)とLATE ELONGATED HYPOCOTYL (LHY)遺伝子を抑制することができた。またPRR9、7、5タンパク質はCCA1とLHYのプロモーター活性を抑制した。さらにPRR9、7、5はin vivoでCCA1とLHYのプロモーター領域に結合していることが分かった。この結合時間は昼から真夜中に見られ、その時間帯ではCCA1とLHYの発現は抑制されていた。一方でCCA1とLHYは明け方にPRR9とPRR7の発現を誘導する。この数時間の時間差を持ったネガティブフィードバックループは、‘概日’スケールの時間を創りだすうえで重要であると考えられる。